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忘れられないお客様 その3

私が苦情処理で一番大切にしているのはそのお客様の気持ちに共感することです。

このステップをはぶくと表向きは解決しているように見えても、実はお客様の中ではずっと不満がくすぶっていて、もっとよい会社があれば簡単に離れていくことになります。

それを教えてくれたお客様とのやり取りです。

その日、ロンドン発の成田着の直行便は到着時刻が2時間くらい遅れました。成田に到着したばかりのお客様からメンバーデスクにお電話がはいりました。当時、某有名企業の取締役をされていた方です。ファーストクラスで年に2-3回ロンドン経由アフリカまでの長距離の往復をご利用いただくとても大切なお客様です。

電話をとった瞬間「僕はとても怒っています。いいですね。とにかく責任ある立場の人がオフィスまで話を聞きにきなさい。」とのこと。とは言うものの、何もわからない状況では会社に報告することもできないのでと、お願いして電話で大まかなお話をうかがいました。

当日お客様は成田到着後取締役会に出席するスケジュールになっていて、機内でスチュワーデスに、「取締役会に間に合わない。今日の取締役会でもし僕の解任決議案でもでたらどうしてくれるのですか?もっとエンジンを全開にして飛ぶように機長に伝えるように!」と申し出ました。するとそのスチュワーデスが「そんなことは無理です」と即座に断ったことに腹を立てていたようです。もう少し丁寧な言い方でお断りしたのだとは思いますが、いずれにしてもお客様はその後もずっと不愉快な気持ちをかかえたまま成田に到着したことは間違いありません。

余談になりますが、飛行機というのはあらかじめ各地の管制塔に提出したフライトプランによって運行することになっています。遅れた場合は遅れたときの時間でフライトプランを作り直し飛ぶことになります。従っていくらお客様からのご要望といえども、途中で時速を買えて運行するようなことはよほどの緊急事態でもないかぎり難しいことなのです。

後日その会社を担当する営業の責任者とお詫びに伺いました。広い取締役室に通されビクビクしていると、思いの外にこやかに、「よく来てくれました。」と言って迎えてくださいます。

「いいですか?僕は飛行機が遅れたことに腹をたてたのではないのです。僕が困っていることに何の関心も共感も示してくれなかった、あの乗務員の対応に腹を立てているのです。僕だって何度も飛行機に乗っているから途中でスピードを変えるなんて無理だということぐらいわかります。ただ、それほど困っていたということを理解して、そういう気持ちを受け止める言葉をかけてほしかっただけなんですよ。」

「これからもいろいろとお客様の苦情を受けるとおもいますが、まず気持ちを受け止めることの大切さをあの乗務員の方に伝えてください。」

これを聞いて、私自身もこれまでの対応を触れ返って、できていなかったかもしれないと反省しました。

今私はいろいろなところで「苦情処理対応研修」のお手伝いをさせていただいています。テクニックはいろいろありますが、まず最初のステップでこの「気持ちの受け止め」をすることの大切さをお伝えします。

具体的な方法としては、お客様がお使いになった言葉をそのまま使うことが有効です。たとえば、「おタクの製品が故障して大変な迷惑を受けた」と言われたら、「どのような故障ですか?」と詳細を伺う前に「それは申し訳ありません。大変なご迷惑をおかけしたのですね。」といった感じです。

身近な例に置き換えてみると、「あ~、疲れた」と言って家に帰ったとき「何があったの?」と聞かれるのと、「そう忙しくて大変だったのね」といわれるのと、どちらが気持ちが和みますか?

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